地中になるリンゴ
ソラニン中毒を起こすのはジャガイモの皮や、光にあたって発芽したり緑化したジャガイモで育てられる家畜である・教訓ージャガイモの緑になった部分や発芽したところは決して食べないこと。
ジャガイモはヨーロッパに定着するのに長い年月を要したが、名前が定着するのにも長い時間がかかった。
はじめジャガイモはフランスでも、パパというペルーでの名で呼ばれていた(フラソス語ではジャガイモは"地中のリンゴ"pomme de terre)。
しかし、このパパという名は、昔から知られていたパタト(patate=サツマイモ)とまぎらわしかった。
サツマイモはナス科ではなくヒルガオ科の植物であるが、その塊根はジャガイモの塊茎に似ていないわけではない。
結局、パタトはジャガイモを意味する俗語として使われるようになる。
パパを最初にボム・ド・テールと呼んだのは、チリおよびペルーの沿海地方ですでにジャガイモを目にしていた国王の技師フレジエだった。
一七一六年のことである。
ジャガイモは、イタリアでは、地下にできるということで、はじめトリュフの名が与えられ、"土トリュフ"taratouffiと呼ぼれた。
それが形を崩してドイツ語のカルトッフェル(kartofel)となった。
ベルギーとフランドル地方では、ジャガイモは"地中のナシ"grondpeerであり、それがアルザス・ロレーヌに伝わってグロソピール(gronpire)となった。
こうした呼称はすべて、ジャガイモが地中にできるという一目瞭然の事実からつくられた。
それは繰り返し確認されてきた了解事項であったはずだが、それでもなお、それらの名前は混乱を生じさせる。
たとえば、ある子供がポム・ド・テールのド・テール(de terre)の意味をとりちがえて"地中の"ではなしに"地球の"と解釈し、わざわざそうことわる必要はないのではないかと驚きをあらわにしたことがある。
「ほかの惑星には生物はまったく存在しないのだから、月のリソゴや火星のリンゴがあるわけないじゃない」と、その子は言ったのだ。
ボム・ド・テールが空中に実るふつうのリンゴとはちがって"地中になるリンゴ"であるということを、彼は忘れていたのである。